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執筆者の写真演奏藝術センター 東京藝術大学

特別演奏会 クセナキス ~音の建築家~ vol.2






2022年12月4日(日) 15:00開演(14:15開場)

東京藝術大学奏楽堂(大学構内)


全席指定 3,000円

※当日券の販売はありません。

※就学前のお子様の同伴・入場はできませんのでご了承ください。



特別演奏会 クセナキス ~音の建築家~ vol.2

◆クセナキスの聴いた「日本」


 「ヨーロッパが、そしてより広く言ってロシアを含む西洋が、宗教や資本、あるいは国家によって独占された唯一無二の文化を創りあげてきた一方で、日本には複数の文化――仏教、禅、神道、キリスト教、そして産業化された同時代社会から生まれた科学――が共存する。」(Xenakis, “The Riddle of Japan,” This Is Japan 8, 1961)これはギリシャ出身の作曲家、ヤニス・クセナキスが1961年の初来日のあと、ある雑誌に寄せた日本の印象についての言葉です。高度成長期の真只中、経済のみならず芸術においても欧米主要都市に「肩を並べる」ことを希求する東京都が建設した東京文化会館の開館記念音楽祭に合わせて来日したクセナキスですが、西洋資本主義社会の歩みに遅れをとらんとする一方で、五〇年代以降の欧米の前衛音楽が非西洋の音楽文化やその美学に新たなインスピレーションを求めたことに呼応するかのような「伝統」文化への再訪が多くの芸術家の間で顕著になっていた当時の日本社会の、そして音楽界の、ハイブリッド性を巧みに表現していると言えるでしょう。  奈良・京都を訪れ、能を鑑賞し、多くの日本人音楽家を通じて日本の伝統文化を体験することになるクセナキスは、それら体験に後押しされた作品を複数書いています。本演奏会のプログラムにある「邦楽4人の会」による委嘱作品である尺八、三絃、二台の琴のための《入陽》もしかり、そしてクセナキス曰く「ヨーロッパ人には一本調子にも聴こえる、上がったり下がったりする[能の]謡」を彷彿とさせる《カッサンドラ》ーーここではひとりの男性歌手がトロイアの王女で破滅の預言者でもあるカッサンドラとコロスとを歌い分けますーーもそうした例のひとつでしょう。  今年生誕100年を迎えるクセナキスが聴いたであろう「日本」を探る本公演では、前半は「クセナキスの中の日本」と題したパネルを通じてクセナキスの音楽から聴こえる「日本」の源泉に迫ります。後半は上述の二曲に加え、原初の叫びにも似た音が続くチェロ・ソロのための《コトス》、ディオニュソス祭の恍惚的熱狂を再現するような金管とパーカッションのための《カル・ペル》、そして運動と停滞の対照が印象的な《ワールグ》と、クセナキス独特の混沌とした音世界を体感していただきます。

    福中冬子(東京藝術大学音楽学部教授)






◆ヤニス・クセナキス Iannis Xenakis(1922〜2001)

ギリシャ人の両親のもと、ルーマニアで生まれる。第2次世界大戦中、対独レジスタンス運動に参加し、ドイツ軍の撤退後、英国軍との戦闘で左目を失明。1946年アテネ工科大学卒業。翌年、政治犯として死刑宣告を受けパリに亡命。1948年からル・コルビュジエのもとで12年間、建築家としてブリュッセル万国博覧会のフィリップス館(1958)などの設計を担当。同時に、パリ音楽院の聴講生としてメシアンの指導を受け、《メタスタシス》(1953-1954)と《ピトプラクタ》(1955-1956)の初演で一躍脚光を浴びる。確率論、集合論、群論などの数学理論を用いたミュジック・ストカスティック(推計学的音楽)を確立。声楽、管弦楽、室内楽、電子音楽等、コンピュータを使用した独創的な作品を多数作曲。1965年、数理自動音楽研究センター(EMAMu)(現ヤニス・クセナキス音楽創造センター(CCMIX))を設立し、任意の図形を音声に変換するユーピック(UPIC)システムを開発。京都賞を受賞した1997年に初演された管弦楽のための《海・変遷》や、絶筆となった打楽器とアンサンブルのための《オメガ》では、極めて純化された音世界が展開されている。



▮第1部 シンポジウム

「クセナキスの中の日本」

【出演者】

シャロン・カナック(ルーアン大学クセナキス・センター)

沼野雄司(桐朋学園大学)

古川聖(東京藝術大学)

水野みか子(名古屋市立大学)

福中冬子(東京藝術大学、モデレーター)



▮第2部 演奏会

【曲目】

《コトス》1977

《入陽》1985

《カル・ペル》1983

《カッサンドラ》1987

《ワールグ》1988



【出演者】

安良岡章夫(指揮)

山本葵(フルート)

吉井瑞穂(オーボエ)

三界秀実(クラリネット)

中川日出鷹(ファゴット)

日髙剛(ホルン)

星野朱音、重井吉彦(トランペット)

村田厚生(トロンボーン)

橋本晋哉(テューバ)

藤本隆文、彌永和沙(パーカッション)

尾池亜美、鈴木舞(ヴァイオリン)

市坪俊彦(ヴィオラ)

山澤慧(チェロ)

長坂美玖(コントラバス)

中嶋俊晴(カウンターテナー)

長谷川将山(尺八)

村澤丈児(三絃)

日原暢子、日吉章吾(箏)※「吉」は「土」と「口」

※スケジュール・曲目・出演者等は都合により変更となる場合がありますので、ご了承ください。


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